胸オペで後悔しないために。後悔しやすいケース、病院の選び方などを解説

胸オペは通常、一生に一度の手術です。
ずっと手術ができる日を待ち望んできて、やっと手術を受けることができるという方が大半です。
そんな大切な治療ですから、手術にリスクはつきものだと頭では理解していても、後悔はしたくないと考えるのが普通です。

ここでは、「胸オペを受けたこと自体を後悔する」場合、「胸オペを受けたことは後悔していないが、結果に少し後悔が残る」場合について解説し、最後に病院の選び方について解説します。

胸オペとは

FTM、FTXの方の胸を、男性的な胸に形成することです。
具体的には発達した乳腺(場合により脂肪や皮膚)を切除します。

女性の象徴のような乳房がなくなることで、QOL(生活の質)が向上する非常に大切な治療です。

胸オペ治療の詳細ページ

胸オペを受けたことを後悔する場合

まず初めに、FTM・FTXの方であれば胸オペを受けたこと自体を後悔する可能性は極めて少ないです。

これは年齢に関係ありません。
年齢を考慮するのは、まだ性自認が確立されているか不明確で、明らかにFTM・FTXであると断定できないケースがあるからです。

明らかに性自認の不一致が認められ、女性的な体への変化や乳房の膨らみを受け入れることができていない場合は胸オペ手術そのものを後悔することは極めて少ない(ほとんどない)と言ってよいでしょう。

稀に性自認が女性の方で胸オペを希望される方がいらっしゃいますが、この場合は手術を受けたこと自体を後悔する可能性がありますので、手術を受けるかどうか慎重に時間をかけて考える必要があります。

治療結果に後悔が残る場合

次に、胸オペを受けたこと自体は後悔していないが、結果に後悔が残る場合についてです。
満足のいかない結果になった場合には、後悔が残ることがあります。

それでは、どのような場合に満足いく結果になりにくいのでしょうか。

胸の膨らみの残存、たるみ、しわが生じた

胸オペの結果で不満が残る一番の原因は膨らみが残る、たるみ、しわが生じることです。
いずれも皮膚が余っていることが大きな原因なのですが、皮膚が余る主な原因は以下の4つです。


  • ①乳腺が大きい

    乳腺が大きいと、それに伴い術後収縮しなければならない皮膚の面積も大きくなります。
  • ②下垂している

    乳腺が大きい場合も乳房が下垂しやすくなりますが、胸を押しつぶすサポーター(ナベシャツ)の使用によって、長年乳房を下に押しつぶすように圧迫していると下垂しやすくなります。
  • ③年齢が高い

    年齢が若ければ若いほど術後の皮膚収縮が良いことは否定できません。

    一方、年齢が高くなると皮膚そのものの弾性の低下もありますし、乳腺が発達して皮膚が伸ばされていた期間も長くなりますので、年齢とともに皮膚収縮も悪くなります。
  • ④皮下脂肪が多い

    痩せている方と太っている方では、痩せている方の方が膨らみ、たるみ、しわが残りにくいです。
    これは、皮下脂肪の重みや皮下脂肪層でのずれ等が原因と考えられます。

    目安としては、お腹周りにお肉がついている方はそれに応じた胸の膨らみが残ると考えてください。
    皮下脂肪の影響はかなり大きく、皮膚を大きく切除した場合でも太っている方はいくらか胸の膨らみが残ってしまいます。

このように膨らみ、たるみ、しわが生じる可能性が高い場合は、傷跡を小さくすることにこだわりすぎず、皮膚を大きく切って余った皮膚も乳腺と同時に切除する術式も検討する必要があります。

左右差を生じた

もともと左右差が少ない場合は出にくいのですが、乳腺の大きさに左右差がある場合は術後結果にも左右差が出やすくなります。

その他に意外と多いのが肋骨の左右差です。
乳腺がある時にはあまり目立たなかった場合でも、胸オペで乳腺が除去されると肋骨の左右差が目立つことは比較的よくあります。

傷跡が目立つ

傷跡が目立つ場合の多くが、傷跡が赤茶色く膨らむ肥厚性瘢痕やケロイドを生じています。

術後1~2カ月で傷跡が赤茶色く膨らむ場合は肥厚性瘢痕であることが多いです。
肥厚性瘢痕は飲み薬、貼り薬、注射などによる治療で改善することがほとんどですので、傷跡が目立ち始めたなと感じたら診察を受けていただくことをお勧めします。

一方、ケロイドは術後数か月~数年して発症することがあります。
症状としては上記の肥厚性瘢痕と似ているのですが、ケロイドは非常に難治性で治療に対する反応が悪いです。
更に一度改善したと思ってもまた再発することが少なくなく、長期的な治療が必要になります。

肥厚性瘢痕とケロイドは早めに治療することが大切です。
おかしいなと思ったら早めに再診を受けていただくことをお勧めしますが、遠方でなかなか手術を受けた医療機関を受診できない場合はお近くの形成外科で大丈夫です。

乳頭が壊死した

乳頭壊死とは胸オペ術後に乳頭が黒くなり、最終的に乳頭が部分的に欠けたりほとんど無くなったりすることです。
通常の胸オペ手術では極めてまれな合併症ですが、胸オペと乳頭縮小術を同時に行った場合には乳頭壊死の可能性が高くなります。

以前は当院でも胸オペと乳頭縮小の同時手術を行っていたのですが、乳頭縮小術の結果が安定しないため、今は行っていません。

胸オペから6か月ほどすると乳頭の血流が安定しますので、術後6か月以上たってから乳頭縮小術を行っています。

担当医とコミュニケーションがとれなかった

手術前に担当医としっかりと手術のゴールラインについて話をすることも非常に大切です。

例えばFTXの方で、少数ではあるのですが「完全に男性的な胸になるのは困るので少し膨らみを残したい」という考えの方もいらっしゃいます。
一般的には平らで男性的な胸に形成するのが胸オペですので、もし膨らみを少し残したいという希望がありましたら、診察の際にしっかり担当医に伝えることが大切です。

また、膨らみ・たるみ・しわが生じる可能性が高い場合、「多少膨らみが残っても構わないので傷を小さくしたい」のか「傷が大きくなっても構わないのでできるだけ平らにしたい」のかしっかりと意思決定する必要があります。

ここでの意思決定がうやむやになってしまい、担当医の認識とズレが生じると満足のいく結果にならない→後悔するという可能性が高くなります。

胸オペの病院選びについて

胸オペで後悔しないためにも、病院選びは大切です。

胸オペを行っている病院は3パターンあります。
健康保険の適応で行う日本の認定施設病院、自費治療で行う日本のクリニック、海外の医療機関の3つです。

それぞれにメリット・デメリットがありますので、ご自身のニーズに合っていると思われるところを選ぶ必要があります。

日本の認定施設病院(保険診療)

まだ数は多くありませんが、一部の病院では胸オペを保険診療で取り扱うことができる病院があります。


下記の病院では保険適用で胸オペを受けることが可能です。[1]

  • ・岡山大学病院
  • ・山梨大学医学部附属病院
  • ・札幌医科大学附属病院
  • ・医療法人 明理会 行徳総合病院
  • ・社会医療法人 光生病院
  • ・名古屋大学医学部附属病院
  • ・沖縄県立中部病院
  • ・札幌中央病院

〈メリット〉

  • ・健康保険が適用になるため、費用が安い
  • ・入院施設があるため、術後入院することができる

〈デメリット〉

  • ・ガイドラインを遵守する必要があるため、手術まで時間がかかる
  • ・ホルモン治療を行っている場合は保険適応できない
  • ・認定施設であっても経験が豊富なわけではない

日本のクリニック(自費治療)

以前から日本で行われてきた胸オペの主流のスタイルです。


〈メリット〉

  • ・手術までの時間が短い
  • ・胸オペの経験豊富なクリニックがある
  • ・ガイドラインに沿っていないケースでも個別に対応できる

〈デメリット〉

  • ・自費診療のため費用が高い
  • ・胸オペの経験が少ない医療機関もある

【補足】胸オペの保険適用について[2]

性別適合手術の健康保険適用は、いくつかの条件や基準が存在します。
保険適用で胸オペを受ける際には、これらの基準を満たし、認定された施設で治療を受ける必要があります。

1. 保険適用の基本条件

胸オペを保険適用として受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • ・患者は性同一性障害と診断されていること
  • ・手術を行う医療機関が、性別適合手術の保険適用の認定を受けていること
  • ・患者が手術前の必要なカウンセリングや指導を受けていること

2. 施設の条件

病院の条件: 一般病床を有する形成外科、泌尿器科、または産婦人科を標榜する病院でなければなりません。
医師の配置: 関連学会が認定する常勤又は非常勤の医師が1名以上配置されていること。
手術の経験: 当該保険医療機関で、医科点数表第2章第10部手術の通則4に掲げる手術を20例以上実施していること。
現状、これらを満たした病院は下記の病院に限られています。

  • ・岡山大学病院
  • ・山梨大学医学部附属病院
  • ・札幌医科大学附属病院
  • ・医療法人 明理会 行徳総合病院
  • ・社会医療法人 光生病院
  • ・名古屋大学医学部附属病院
  • ・沖縄県立中部病院
  • ・札幌中央病院

3. ホルモン療法との関連

性同一性障害に対するホルモン製剤は、現状、保険適用となる製剤が存在しません。
このため、性同一性障害に対するホルモン療法は自費診療となります。
現在の保険診療の決まり事として、同一疾患に対して保険診療と自費診療を行うことは原則的に禁じられています。
従って、自費診療となるホルモン療法を行っている場合、保険診療で胸オペを受けることができないという問題点があります。

海外の医療機関

日本で胸オペがあまり行われていなかった頃は海外(主にタイ)で手術を受けることが主流でした。
以前は経験豊富な海外で手術を受けるメリットがあったのですが、近年はあまりメリットがありません。


〈メリット〉

  • ・内摘と胸オペの同時手術を受けやすい

〈デメリット〉

  • ・主治医とコミュニケーションが取りにくい、もしくは取れない
  • ・術後フォローが手薄になる

まとめ

後悔しない胸オペのために、重要なポイントをあらためて記述します。
無料カウンセリングで丁寧に説明することを伝え、まずは気軽にカウンセリングの相談をしていただくよう伝えましょう。

よくある質問

胸オペを後悔する理由にはどのようなものがありますか?

胸オペを後悔する理由には、「胸オペを受けたこと自体を後悔する」場合と、「胸オペを受けたことは後悔していないが、結果に少し後悔が残る場合」が考えられます。
FTM/FTXに関しては胸オペを受けたこと自体を後悔することはあまりありませんが、結果に少し後悔が残ることは時々あります。

胸オペして後悔しないために大切なことはなんですか?

まったく何も知らないで胸オペを受けるということはまず無いと思われますが、まずはある程度ご自身で情報を集めてください。
それからいくつかの医療機関で話をし、信頼できると思える主治医を探すことが大切です。

胸オペは保険適用で受けられますか?

胸オペ(乳房切除術)を含む性別適合手術は、2018年4月から健康保険の適用が開始されました。
しかし、すでにホルモン療法を併用している場合、手術は保険の対象外となります。
また、保険適用で手術を実施できる病院は8つのみのため、保険適用での手術のハードルは依然として高いと言えます。

院長のメッセージ

手術に不安はつきものです。
色々調べるうちに、理解が深まって不安が小さくなることがある一方、かえって不安が大きくなってしまうこともあります。
ある程度の知識が得られたら、一度医療機関で相談されてみることをお勧めします。
専門医から話を聞くだけでも大分違うと思いますよ。

手術に不安はつきものです。
色々調べるうちに、理解が深まって不安が小さくなることがある一方、かえって不安が大きくなってしまうこともあります。
ある程度の知識が得られたら、一度医療機関で相談されてみることをお勧めします。
専門医から話を聞くだけでも大分違うと思いますよ。

大船T's形成クリニック院長 高梨 昌幸 大船T's形成クリニック院長 高梨 昌幸

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