FTMとは?
性別適合手術の種類についても紹介
FTMってなんだろう?
FTM(エフティーエム)とは、Female to Maleの略です。
心と身体の性別に違和感がある「トランスジェンダー」の1カテゴリで、心の性別が男性、身体の性別が女性として出生し、女性から男性へ性別移行を望む方を表す総称です。
男性から女性へ性別移行を望む方はMTF(エムティーエフ)と言います。
トランスジェンダーとは、LGBTのTの部分
FTMの定義
「女性の体で生まれてきたのだが、自分の性別は男性であると認識している。」
外科的な治療をして
社会的にも望んだ性で生きる
(トランスセクシャル)
FTMを決める要素
身体的特性
生物学的には女性(性染色体が女性)のこと。
性自認
自身の性は男性であると認識していること。
性的指向と性表現は、FTMを決める要素として関係ありません。
性自認が男性であって、恋愛対象として女性を好む場合もあれば、男性、その両方や中間性を好む場合もあります。 FTMの方も恋愛対象は様々です。
性表現はFTMを決める要素とはなりません。
性表現は自身をどのように表現したいかという問題です。 FTMの場合、男性的に自身を表現される方が多いのですが、女性的または中性的に表現されることもあります。
FTMの治療の種類
FTMの治療は様々ありますが、治療は必ずやらなければいけないものではありません。 自身にとって必要であると考える治療を取捨選択していくことが大切です。
ホルモン治療で男性ホルモンを補充
■補充方法と変化
- 国内で一般的に行われている方法は注射です。(飲み薬、塗り薬なども有)
- 男性ホルモンを数週間おきに定期的に注射することで、生理が止まり、声が太くなり、体毛・ヒゲが濃くなる等身体的変化が起こります。
- 乳腺はあまり小さくはなりません。
- ニキビができやすくなる、体臭が強くなる、AGA(男性型脱毛症)などがマイナス面です。
FTXの方はあまり希望されません。
FTXとは:性同一性障害の類型の一つで、生物学的な性は女性だが、自身を特定の性別だと自認していない、つまり「中性」あるいは「無性」だと自認している人。
乳房切除術
- 乳腺・乳房を切除することにより、男性的な胸に形成します。
- 形成外科、美容外科で行われます。
- 乳房切除術は性別適合手術ではありませんが、ほとんどのFTMの方が乳房切除術を希望されます。
- より男性的な胸に形成するために、乳頭の縮小術も行うことがあります。
子宮・卵巣摘出手術
- 性別適合手術の一つとして、婦人科で行われます。
- 子宮・卵巣を摘出しますが、腹部切開から行う方法、腹腔鏡で行う方法、膣から行う方法などがあります。
陰茎形成手術
- 性別適合手術の一つとして、泌尿器科・形成外科で行われます。
- 尿道の延長など大掛かりな治療となりますので、入院施設のある病院で行われることが一般的です。
- 合併症のリスクもありますので、手術を受けるかどうか十分に検討する必要があります。
FTMの方が戸籍を変更するには?
以下の6つを満たす場合に、家庭裁判所にて性別変更の審判をすることができます。
海外では外科的手術が必要条件から削除されている国もあります。
本国でも議論を重ね、必要条件は変化していくでしょう。
- 二人以上の医師により,性同一性障害(GID)であることが診断されていること
- 18歳以上であること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
- 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
- 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
大船T's形成クリニックでは、FTMの方向けに、乳房の除去手術(胸オペ)を専門的に行っています。安心してご相談ください。
性別適合手術(SRS手術)とは
性別適合手術とは、性同一性障害の方が自己認識する性別に合わせて、性腺・性器の切除やその形態を変える手術のことです。 性転換手術と呼ばれることもありますが、関連学会では性別適合手術で統一されています。 性別適合手術は非常に重要な手術ではあるのですが、体への負担や様々な問題点から、戸籍変更の際に事実上性別適合手術を必須としていることを疑問視する意見もあります。
男性から女性への手術(MTF SRS)
男性から女性への手術は、主に精巣(睾丸)切除、陰茎切除などの外性器の切除や、外陰部形成、造膣術などの形成手術になります。
睾丸のみの摘出まで、陰茎の切除まで(造膣は行わない)など、どこまで行うかは個人の選択になります。
その他、MTFに対する手術は乳房形成(豊胸術)、顔貌の女性化、声の女性化などがありますが、これらは狭義の性別適合手術(性腺/性器の手術)ではなく、性別適合手術関連の治療として考えます。
女性から男性への手術(FTM SRS)
女性から男性からへの手術は、主に乳腺摘出・乳房切除、子宮・卵巣摘出術、膣閉鎖、陰茎形成術があります。
これらの中で、戸籍変更のためには卵巣摘出術が必要になります。
いわゆる性別適合手術に該当するものは、子宮・卵巣摘出術、膣閉鎖、陰茎形成術です。
FTM手術で最も多い胸オペ(乳腺摘出・乳房切除)は戸籍の性別変更に関係はなく、生殖機能に影響を及ぼさないため、性別適合手術(性腺・性器の手術)とは分けて取り扱われています。
男性から女性への性別適合手術(MTF SRS)の流れ
MTF(男性から女性)への性別適合手術とその関連治療は、精神科領域の治療と、精巣(睾丸)摘出術、陰茎切除術、外陰部形成術、造膣術、乳房形成術(豊胸術)、顔貌の女性化手術、声の女性化手術、脱毛などの身体的治療があります。
どの手術・治療をどこまで行うかは個人の考え、必要度によって選択できます。
医療従事者に向けたガイドラインを踏まえた一般的な流れは
①精神領域の治療(治療の最初から最後まで)
②ホルモン療法
③性別適合手術
となります。
いわゆる性別適合手術とは、性腺・性器の手術(精巣摘出術、陰茎切除術、外陰部形成術、造膣術)のことを指します。
乳房形成術(豊胸術)、顔貌の女性化手術、声の女性化手術、脱毛はQOLを上げるための治療ですので、必要なタイミングで、個人のニーズに合わせて行います。
手術にはメリットだけではなく、必ずデメリットも伴います。
特に造膣術は性別適合術の中では体への負担も大きく、メリット・デメリットを十分に検討して選択する必要があります。
女性から男性への性別適合手術(FTM SRS)の流れ
FTM(女性から男性)への治療も同様に、精神科領域の治療と身体的治療(ホルモン治療と乳腺摘出・乳房切除術、性別適合手術)があります。
どの手術・治療をどこまで行うかは個人の考え、必要度によって選択できます。
医療従事者に向けたガイドラインを踏まえた一般的な治療の流れは
①精神領域の治療(治療の最初から最後まで)
②ホルモン療法
③乳腺・乳房切除術
④性別適合手術
となります。
ただし、②ホルモン療法、③乳腺・乳房切除術、④性別適合手術の順番は個人の判断に任されます。
更に、④FTMの性別適合手術は、
第一段階の手術:卵巣摘出術、子宮摘出術、尿道延長術、膣閉鎖術
第二段階の手術:陰茎形成術
等があります。
性別適合手術においても、何をどこまでやるかは選択できます。
身体的治療の中で②ホルモン療法と④性別適合手術は行わないという選択も少なくありません。
特にFTXの場合は行わないことが多いです。
またFTMの場合でも④性別適合手術までは考えていないという方も少なくありません。
③乳腺・乳房切除術は身体的治療の中では非常に重要な位置づけであり、乳房の膨らみは著しいQOLの低下を招くことから、治療希望者の低年齢化を認める傾向にあります。
当院で施術可能な性同一性障害に対する治療
当院では性腺・性器の手術による性別適合手術は行っていませんが、FTM・FTXの乳腺・乳房切除術(胸オペ)と乳頭縮小術による男性的胸部形成術を長年行っています。
乳腺・乳房切除術は、一般的にな日本人の場合、U字切開と呼ばれる方法で皮膚切除を行わないことが大半ですが、非常に乳房が大きい場合や、長年のナベシャツの使用や年齢などの影響で乳房の下垂が強い場合は余分な皮膚も切除する乳房切除術が必要になります。
当院は日帰り手術でありながら、この乳房切除術も多く行っています。
そして、乳房切除術の場合、乳輪乳頭も一緒に切除されてしまいますので、乳輪乳頭をタトゥーで再建します。
タトゥーによる再建であるからこそ、乳輪周囲に不自然な傷跡を残さず、より自然な感じに近づきます。
また、乳腺・乳房切除術(胸オペ)を終えた後、その経過が順調であったとしても、もともとの乳頭の大きさが気になるということも少なくありません。
せっかく胸が平らになったのに、乳頭の突出が強く、シャツ1枚になることに抵抗が生じてしまうのです。このような場合には乳頭縮小術を行います。
しかし、一般的な乳頭縮小術は女性向けの乳頭縮小術であり、男性的な乳頭を形成するための術式はあまり知られていません。
そこで当院では、男性的な乳頭を形成するために術式を改良し、独自の乳頭縮小術を行っています。
胸オペ・乳腺切除術について
手術の目的
乳房切除術は乳腺で膨らんだ胸を平らで男性的な胸に戻すことです。
- 胸の膨らみは女性的な象徴としての側面がある。
- その存在を望まない場合は非常に大きな生活の支障となり、QOL(クオリティーオブライフ、生活の質)を著しく損なうことになる。
乳房切除術は胸の形成術を経て、QOLの向上を目的とした治療であると考えています。
手術を受けられる年齢
当院では基本的に18歳以上の方を手術の対象としていますが、親権者の同意がある場合に限り18歳未満の方も適宜対応しています。
ガイドラインとの兼ね合い
日本精神神経学会主導の「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」
第一段階:精神的サポート
第二段階:ホルモン療法と乳房切除術
第三段階:性器に関する手術
ガイドラインに沿った進め方が原則ではあるのですが、現実的には
「精神科受診が難しい」
「精神的サポートを必要としていない」
「戸籍変更までは考えていない」
「性自認が中性(FTX)である」
「乳房の存在のみが受け入れがたい」
このような場合、ガイドラインの順守に固執することは治療を希望される方のメリットにつながりませんので、個々の状況に応じて治療を行っていくことが大切だと考えています。
※ガイドライン自体は医療者に対する指針であり、治療を受ける方に対する規則ではありません。
ホルモン補充療法の有無は特に関係ありません。
胸オペのリスクと合併症
乳房切除後の乳がんの発生について
FTMの乳房切除術は男性的な胸を形成する手術で実際は乳腺がわずかに残っています。これは乳腺を全て完全に摘出しようとすると変形を残したり、術後合併症が増えたりするからです。
乳房切除後に乳がんを発症したケースも報告されており、乳がんの可能性が無くなる訳ではありません。
現実的には定期的な乳がん検診を受けることは難しいと思いますので、胸にしこりを見つけた時には放置せずに一度医療機関を受診されてください。
血腫
手術部位乳腺除去部分に血液が溜まって腫れてしまうことです。殆ど手術当日〜翌日の間に形成されますが、まれに翌日以降に形成されるものもあります。
【症状】
軽度の場合は少し膨らんでいる程度ですが、大きい血腫になると胸が水風船のように膨らみ、強い痛みを伴います。
【治療】
軽度のものは自然吸収を待つか、血腫が溶けてきたころ(術後7〜10日頃)に注射器で吸引します。大きな血腫は感染などのトラブルの原因となりますので、血腫除去手術が必要になることがあります。
【予防するには】
①手術当日の安静が大切
不必要に出歩いたりしないようにしましょう。
②痛みのコントロール
痛み止めを処方します。痛みがある時はがまんせずに服用してください。
③血圧のコントロール
高血圧がある方は高血圧の治療を行って血圧が安定してから手術を受けてください。
その他、過去に血が止まりにくかった経験がある方や、血が止まりにくくなる薬を飲んでいる方は血腫のリスクが高いので、診察時に必ず申告してください。
乳輪乳頭壊の血流不全
【症状】
乳輪乳頭に黒いかさぶたのようなものができたり、乳輪縁の傷の治りが悪くなったりします。
血流不全がかなり強くでると、乳頭の一部が欠けてしまうことも稀ながら起こり得ます。
【リスク】
①過度な圧迫
夜間は圧迫を解除し乳輪乳頭への血行を促すため、術後、胸にバンドを巻きます。手術当日は丸一日巻きますが、翌日からは日中だけ巻きます。
②喫煙
タバコは皮膚の血の巡りを悪くし、壊死が高くなります。特に乳輪乳頭壊死の可能性がある手術法を受ける場合は禁煙を徹底してください。
皮膚のたるみ
【症状】
乳腺摘出後に胸の皮膚のだぶつきが残ることです。乳腺が無くなることで皮膚も縮み、それでも追い付かない場合に起こります。
【リスク】
①乳房が大きい
乳房が大きいとそれを包む皮膚面積も大きくなりますので、乳腺摘出後に皮膚が余りやすくなります。
②年齢
同じような体型、乳腺の大きさの方でも30代以降の方と20歳前後の方とではどうしても仕上がりに差が出てしまいます。
- 若い方は皮膚の弾力性がるので術後の皮膚の収縮も期待できる
- 年齢が高くなるとどうしても皮膚の収縮が悪くなり、術後に皮膚が余りやすくなる。
③ナベシャツの使用
乳房を切除するまでは圧迫下着(ナベシャツ)を使用して日常生活を送っている方は多いのですが、実は手術という観点からはあまり良くないのです。
- 乳房を下側に引き延ばすようにしてナベシャツで圧迫すると次第に皮膚が伸びてきてしまう。
- ナベシャツの使用歴が長いほど皮膚が伸ばされてくる傾向にある。
傷跡
乳輪半周切開の傷跡は基本的にはあまり目立ちません。ただし、傷跡周囲の乳輪の色が白く色が抜けることがあり、その場合はやや目立つことがあります。
白く抜けた範囲が大きい場合はタトゥーでカバーすることも可能です。
胸の皮膚感覚異常
術後胸の感覚が鈍くなったり違和感が生じたりします。
この症状はほとんどの方が術後経験しています。胸の皮膚感覚は術後1年位かけてゆっくりと回復してきます。
1年経ってもやや鈍い感じが残る場合もあるのですが、生活に特に支障は無い範囲です。
左右差
人間の体は必ず右と左では違いがあり、若干の左右差は出ることがあります。(乳腺の大きさ、皮膚の余り具合、乳輪の大きさ、骨格など)
また、今までは乳腺に隠されて本来の胸の形が見えていなかった場合も、術後に肋骨がやや出ている、少し胸が凹んでいるなど本来の形が目に見えるようになることがあります。
よくいただくご質問
- FTMとはなんですか?
- 性同一性障害(身体の性と自覚する性の不一致)の一つで、「女性の体で生まれてきたのだが、自分の性別は男性であると認識している。」状態のことです。
- FTM向けの治療にはどのような種類がありますか?
- 精神科医による診断、男性ホルモン補充、乳腺摘出・乳房切除術、子宮卵巣摘出術、陰茎形成術等があります。
いずれの治療も、必要な治療を取捨選択することが大切です。 - 戸籍変更にFTMの治療は必要ですか?
- 戸籍変更のためには
1. 二人以上の医師により,性同一性障害(GID)であることが診断されていること
2. 18歳以上であること
3. 現に婚姻をしていないこと
4. 現に未成年の子がいないこと
5. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
6. 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
の6つを満たす必要があります。
このうち「5. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」と「6. 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること」を満たすために、ホルモン治療と子宮卵巣摘出術が必要になります。
乳房の有無は戸籍変更に関しては関係ありません。
院長のメッセージ
これまで多くの乳腺摘出術、胸部形成術に携わってきました。そして「悩み、コンプレックス、ボディイメージの違和感」を解消することの大切さを実感し、これからも少しでも皆様の力になれればと考えています。手術にあたってはガイドラインに沿った治療を推奨していますが、その他のケースも個別に対応していますのでご相談ください。