乳房除去手術は安心?胸オペと死亡事故について解説

FTM・FTXの方にとって、胸オペはとても大切な治療です。

そして、人生で初めて受ける大きな手術になる方も少なくありませんので、手術の安全性に不安を感じるのも当然のことです。

しかし、手術のリスクについて十分な知識がないために、余計に心配になるということも少なくありません。

そこで、ここでは胸オペに関係する死亡事故の可能性や重篤な合併症について解説し、胸オペに関するリスクについて知識を深めていただければと思います。

FTMの胸オペで死亡事故が起こる可能性は?

手術の大小にかかわらず、手術にはかならずリスクが伴います。

特に過去にあった死亡事故の影響で、胸オペによる死亡事故の可能性について心配されている方も少なくないようです。
ここでは胸オペを受けるにあたって生命が危険にさらされる「手術」「麻酔」「偶発的合併症」によるリスクについてお伝えします。

手術による死亡事故の可能性は?

手術が直接的な原因で死亡する場合、大量出血や重要な臓器(脳、心臓、その他内蔵)を損傷する等があげられます。

胸オペは手術範囲がほぼ胸全体ということもあり、手術範囲が比較的広い手術といえます。
しかし、手術で操作する深さは筋肉より浅い層ですので、体表の手術といえます。

解剖通りにきちんと手術すれば、命にかかわるような大量出血する太い血管もありませんし、生命の維持に必要な重要臓器に触れることもありません。
ですので、胸オペ手術が直接的原因での死亡事故の可能性は、十分な経験を積んだ外科医が手術を行えばゼロに近いと言ってよいでしょう。
その他、胸オペ手術の直接的原因以外で死亡事故が起こる可能性は、麻酔関連と偶発的合併症があげられます。
麻酔と偶発的合併症に関してはこのあと説明していきます。

麻酔による死亡事故の可能性は?

当院を含め、一般的に胸オペは全身麻酔で行います。

胸オペ予定の方から時々、「全身麻酔から永遠に目が覚めないことはあるのですか?」と聞かれることがあります。
結論から言うと、全身麻酔から永遠に目が覚めないことはありません。

もちろん麻酔から覚めにくい方はいらっしゃいますが、長くても数十分ほど目が覚めるまで余計に時間がかかる程度です。

この麻酔から覚めないという表現は過去にFTMの方の麻酔事故があったことから由来しているのかもしれませんが、麻酔から覚めないということはありません。

全身麻酔中に他の合併症を発症しない限りは麻酔薬の投与をやめれば必ず麻酔から覚めます。

全身麻酔がきっかけとなる重篤なトラブルは「呼吸トラブル」「悪性高熱」があげられます。

一つ目の呼吸トラブルに関しては、一昔前の全身麻酔は薬の影響が長時間残ってしまったり、呼吸を止める薬(筋弛緩薬)を併用したりしていましたので、麻酔から覚めてもしばらくしたら呼吸が止まってしまうというリスクがあり、麻酔から覚めた後も注意が必要でした。

しかし、最近は麻酔学の進歩によって非常に短時間で麻酔の影響が無くなる麻酔薬が開発され、また、呼吸を止める薬を使用しない麻酔方法が確立されましたので、安全な日帰り全身麻酔が可能になりました。

二つ目の悪性高熱は、全身麻酔がきっかけで非常に高い熱が出て全身状態がどんどん悪くなる合併症です。

注意する必要がある合併症なのですが、全身麻酔がきっかけとなる悪性高熱の発症確率は0.001~0.002%と極めて稀です。
さらに悪性高熱を発症した際に悪性高熱の治療薬をすみやかに使用した場合、死亡率は10%以下です。

まずは家族歴や過去の麻酔で問題がなかったか確認すること、悪性高熱を発症しにくい薬剤を選択することで予防します。

さらに万が一悪性高熱を発症したときのために治療薬を常備することと、早急に適切な治療を行うことで対応することになります。

偶発的な合併症の可能性

胸オペや全身麻酔中に起こる可能性がある生命に関わる偶発的な合併症とは、心筋梗塞、重篤な不整脈、脳梗塞、脳出血、肺塞栓などがあげられます。

心筋梗塞、重篤な不整脈、脳梗塞、脳出血などは主に胸オペを受ける10代~30代の健康な方はまず心配ないと言ってよい合併症です。

また、肺塞栓も日帰り治療など早期に動き始めることによって、発生確率をグッと抑えることができます。

胸オペを受けると寿命が短くなる?健康への影響は?

乳腺は妊娠・出産時に母乳を作るという働き以外、機能的な役割はありません。
通常時はホルモンの増減を含め全身へ作用する働きはありませんので、胸オペで乳腺を摘出したからといって長期的な寿命、健康への影響は特にないと考えられます。

胸オペとは直接の関係はありませんが、卵巣摘出術や男性ホルモンの投与は全身への影響は必ずあります。

卵巣摘出や男性ホルモン投与によって、女性ホルモンが減少し男性ホルモンが増えます。
このことによって動脈硬化が起こりやすくなり、心筋梗塞、脳梗塞のリスクがやや上がりますので、寿命、健康への影響があるといことになります。

昔の中国や韓国に存在した宦官という役職の人たちは、宮仕えするために去勢する必要があったのですが、彼らは当時の一般的な男性よりも十数年寿命が長かったという調査結果からも男性ホルモンの寿命への影響をうかがい知ることができます。

一般的には男性は女性より寿命は短いです。
FTMにおける男性ホルモン投与による影響は今後さらにデータが集まり検証されていくでしょうから、注視しておくべきことでしょう。

胸オペに関して不安なときは、まずはご相談ください

手術に伴うリスクは年齢、肥満の有無、現在かかっている病気など様々な要素で変わってきます。 ここでお伝えしたことは一般的な内容ですので、不安が残るようであれば一度診察を受け、直接お話を聞いていただくことをお勧めします。

よくある質問

胸オペ(乳房切除手術)で死亡事故が起こることはありますか?

胸オペ手術自体は大きな事故が起こる可能性が極めて低い手術です。
また、全身麻酔に関しても健康な若い人であれば、生命の危険にさらされるような合併症を生じる可能性は極めて低いです。
よって、死亡事故が起こる可能性はゼロにはなりませんが、極めて低いと言えるでしょう。

胸オペ(乳房切除手術)は健康や寿命に影響しますか?

乳腺は妊娠・出産時に母乳を作るという働き以外は機能的な働きはありません。
通常時は乳腺による全身への作用はありませんので、胸オペで乳腺を摘出しても長期的な寿命、健康への影響は特にないと言ってよいでしょう。
ところで、胸オペ術後にも乳がんの発生報告がありますので、乳がんの可能性がなくなる訳ではないことに注意して下さい。

胸オペ(乳房切除術)で死亡事故の経験はありますか?

当院で行った胸オペ(乳房切除術)で死亡事故はありません。
術式の改良、経験の蓄積、日帰りに適した全身麻酔方法の導入などにより、極力リスクを抑えるようにしています。
経験豊富な外科医が行う胸オペは決してリスクが高い治療ではありませんので、過度に心配されなくて大丈夫です。

胸オペ(乳房切除術)を受ける際に、ホルモン治療を一旦やめる必要があるのですか?

当院ではホルモン治療をいつも通り継続したまま胸オペ(乳房切除術)を受けていただいています。
手術前後にホルモン治療継続を継続することによる不具合も今のところありませんので、今後も手術の際にホルモン治療を中止する予定はありません。

院長のメッセージ

胸オペにかかわらず、手術には必ずリスクが伴うことは否定できません。
しかし、若くて健康な方の胸オペ手術は決してリスクが高い手術ではありません。
更に、長年の経験をもとにいかにリスクを避けるか、合併症が生じかけたときにいかに最小限のダメージに留め、リカバリーするかを常に考え・準備することによって、より安全な手術が可能になります。

胸オペにかかわらず、手術には必ずリスクが伴うことは否定できません。
しかし、若くて健康な方の胸オペ手術は決してリスクが高い手術ではありません。
更に、長年の経験をもとにいかにリスクを避けるか、合併症が生じかけたときにいかに最小限のダメージに留め、リカバリーするかを常に考え・準備することによって、より安全な手術が可能になります。

大船T's形成クリニック院長 高梨 昌幸 大船T's形成クリニック院長 高梨 昌幸

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