顔にできる
シミの原因・治療法

顔にできるシミの原因・治療法

顔にできるシミは、年齢を重ねるにつれて誰もが経験する肌の悩みの一つです。シミの改善が期待できるとされる化粧品や医薬品、サプリメントでは改善が見られないことも多いものです。

シミは一口に「シミ」と言っても、実はその種類や原因はさまざまです。紫外線や肌の老化現象による老人性色素斑や脂漏性角化症、ホルモンバランスの変化や肌の刺激による肝斑、遺伝的な要因が強いそばかすなど、シミの種類によって原因も違えば、適切な治療法も異なってきます。

形成外科専門医として多くの患者様の治療に携わってきた経験から、シミの種類を正しく見極め、適切な治療法を選択することの重要性を実感しています。この記事では、顔にできる代表的なシミの種類とその原因、その治療法について解説していきます。

シミでお悩みの方に、少しでも治療の選択肢についての理解を深めていただき、より良い治療選択のお手伝いができれば幸いです。

顔のシミの種類と原因

顔のシミは、発生する原因や場所によって特徴が異なります。
効果的な治療を行うためには、まずシミの種類を正確に把握することが重要です。正しい治療法を選択できれば、多くのシミは改善が可能となります。

顔に発生するシミは、大きく分けて5つのタイプがあります。
加齢とともに増加する老人性色素斑(日光黒子)、同様に肌の老化に伴うことが多い脂漏性角化症(老人性イボ)、女性ホルモンの影響を受けやすい肝斑、そして遺伝的な要因が強いそばかす、比較的若いころから発症しやすいADMです。

ここからは、それぞれのシミの特徴と原因について、解説していきます。

顔のあらゆる部分にできるシミの代表、老人性色素斑(日光黒子)

老人性色素斑は、一般的に「シミ」と呼ばれる色素沈着の代表的なものです。主に日光に当たりやすい頬、こめかみなどの部位に茶褐色の色素斑として現れます。

老人性色素斑の主な原因は、長年の紫外線暴露と加齢による肌の変化です。
長年の紫外線暴露によって細胞の損傷が蓄積し、メラノサイトと呼ばれるメラニン産生細胞が活性化され、過剰なメラニン色素が産生されます。
老人性色素斑は40代以降に目立ち始めることが多く、年齢とともに数が増えたり、大きさが広がったりする傾向があります。日常的に紫外線を浴びる機会が多いと、より早い年齢で発症したり、症状の進行が速くなる可能性が高くなります。

予防には、日常的な紫外線対策を怠ると新たなシミの発生や再発の可能性が高くなるため、治療と並行して適切なスキンケアやメンテナンスも重要です。

ただし、すでにできてしまった老人性色素斑は、一般的なスキンケア製品だけでは改善が難しく、医療機関での専門的な治療が効果的です。

盛り上がったシミ、脂漏性角化症(老人性イボ)

脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は「老人性イボ」と呼ばれることもあり、老人性色素斑と同様に、紫外線への暴露が多い頬やこめかみによく認められます。
見た目は茶色から黒色のやや隆起したものが多いのですが、皮膚と同じ色のものもあります。

一般的には、40代以降の方の顔や手の甲に認められることが多いのですが、20代など若い方にも認められることがあります。

脂漏性角化症は紫外線と年齢変化に伴う肌の老化現象が大きな原因ですが、若年者や紫外線の影響が少ない腹部に認められるケースもあります。

治療は医療機関でのレーザー、液体窒素、切除手術が主に行われています。

両頬のクスミを生じる肝斑(かんぱん)

肝斑は、両頬に薄茶~茶色い色素沈着として認められることが多いですが、額、口回りなどにも認められることがあります。
特に30~50代の女性に発症することが多いです。

肝斑の主な原因は、紫外線、摩擦などの外部からの刺激と、女性ホルモンのバランス変化が関連していると考えられています。

肝斑の治療は医学的なアプローチと適切なスキンケアの両方からアプローチすることが、とても大切です。
特に、肝斑を意識したスキンケアをおろそかにした状態では、医学的なアプローチの効果が全く得られなくなります。

頬、まぶた、鼻を中心にできるそばかす(雀卵斑)

そばかす(医学用語では雀卵斑)は、主に頬やまぶた、鼻を中心に小さな茶褐色の色素斑として現れます。
他のシミと異なり、幼少期から見られることが多く、遺伝的な要因が強いのが特徴です。

そばかすは小さい頃から認められることが多いのですが、思春期ごろから更に目立つようになったり、紫外線の影響で目立つようになったりします。

そばかすは一般的に健康上の問題はありませんが、美容上の悩みとなることがあります。
遺伝的な要因が強いため、そばかすの予防は難しいものの、治療にはよく反応しますので、専門の医療機関で適切な治療を受けることにより、改善することは可能です。

ただし、治療後も紫外線対策をきちんと行うなど、再発予防の対策は引き続き必要となります。

両頬やこめかみに見られるADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、成人(20~30歳前後)になってから現れる色素斑で、主に下まぶたから頬骨付近、こめかみなどに発生します。

ADMは単独で認められる場合もありますが、老人性色素斑や肝斑など他のシミと混在していることも多く、割とよく目にするシミです。

老人性色素斑や雀卵斑等のシミとは違う特徴的な色調や形状のことが多く、見慣れれば比較的診断は容易なことが多いです。
しかし、肝斑と似たような場所にできることから肝斑と間違われたり、老人性色素斑と間違われてしまうことも少なくありません。

肝斑とは治療法が全く違いますし、老人性色素斑とも治療法・治療経過が違う部分がありますので、しっかり診断がついていないとなかなかシミ(ADM)が消えない・・・ということになってしまいます。

まずは専門の医療機関での診断が大切です。

顔のシミの治療法

シミの治療には、シミの種類に応じてさまざまな方法があります。医療機関では、レーザー治療、光治療、イオン導入、内服薬、外用薬など、患者様の状態に合わせて最適な治療法を選択します。
特に重要なのは、シミの種類を正確に診断することです。例えば、肝斑に対して強いレーザー治療を行うと症状が悪化する可能性があり、また、ADMに光治療を行っても効果は望めません。そのため、形成外科専門医による適切な診断のもと、治療を進めていくことが重要です。
また、どの治療法を選択する場合でも、治療後の再発予防が大切です。日焼け止めによる徹底した紫外線対策や、肌に負担をかけないスキンケアの継続など、日常的なケアも治療効果を左右する重要な要素となります。
以下では、シミの種類別に効果的な治療法について詳しく解説していきます。

老人性色素斑(日光黒子)

老人性色素斑の治療で最もスタンダードな治療はレーザーによる治療です。
美容医療に使われるレーザーは様々ありますが、Qスイッチレーザーとピコレーザーの2種類が老人性色素斑治療で推奨されるレーザーです。

Qスイッチレーザーは、昔からシミ治療に用いられてきたレーザーです。

Qスイッチレーザーは、ルビーレーザー、ヤグレーザー、アレキサンドライトレーザーの3種類が主に使われます。
それぞれにいくらか特性があるものの、適応と方法を間違えなければ確実性の高い治療と言えますが、テープ保護を必要とすることが多く、ダウンタイムが比較的長くなるというデメリットがあります。

一方、ピコレーザーは前述のQスイッチレーザーよりも新しいレーザーです。

ピコレーザーはQスイッチレーザーよりも皮膚に与える熱のダメージがより少ないことが特徴です。
ピコレーザーは基本的にテープ保護の必要が無く、ダウンタイムを抑えながら改善することができるレーザーです。
また、繰り返し行うことで老人性色素斑の除去だけではなく、肌質の改善も期待できます。

以前はQスイッチレーザーよりも老人性色素斑の除去能力は劣る傾向にあったのですが、機器や照射方法の改善で、Qスイッチレーザーに置き換わる存在になってきました。

脂漏性角化症

脂漏性角化症の治療として、最もお勧めできる方法は、炭酸ガスレーザーやエルビウムヤグレーザーなど組織を蒸散させるレーザー治療です。
最終的には傷跡になることはまずありませんし、確実性の高い治療です。

次に、液体窒素治療はほとんどの皮膚科で簡単に行うことができ、保険適応になることがあるというメリットがあります。

一方、脂漏性角化症の厚みに合わせて治療強度の調整を行う必要があり、やりすぎれば強い色素沈着が長期にわたり残りますし、弱すぎれば取り残しや早期の再発につながるという点から、安定した治療成績を得るという点では上述のレーザー治療より劣ります。

最後に脂漏性角化症の切除手術は、確実に取りきるという点では良い治療なのですが、傷跡が残るという点がデメリットです。
組織を検査に出したい場合や、レーザー治療では傷が治るまでかえって時間がかかると予想される場合に限ってお勧めできる治療です。

肝斑(かんぱん)

肝斑の治療は医学的なアプローチと適切なスキンケアの両方からアプローチすることが、とても大切です。
特に、肝斑を意識したスキンケアをおろそかにした状態では、医学的なアプローチの効果が全く得られなくなります。

肝斑のためのスキンケアは、肝斑の原因をできるだけ取り除くという目的で行います。
肝斑の原因、すなわち「肌の刺激」をできるだけ与えないというです。
具体的には、紫外線対策を十分に行い、肌を愛護的に扱って下さい。
洗顔の時は泡だけで洗うようにし、タオルなどでゴシゴシ擦ってはダメです。

医学的なアプローチとしては、トラネキサム酸の内服です。
トラネキサム酸の内服を行ったうえで、必要であればレーザー治療などを行うことがありますが、上記のスキンケアを徹底し、内服を継続するだけでもかなりの率で肝斑は改善します。

そばかす(雀卵斑)

そばかすは治療によく反応しますので、適切な治療によって改善することができます。

治療効果が高く、そばかす治療としてお勧めできる方法は「ピコレーザー」「Qスイッチレーザー」「光治療(IPL)」です。

ピコレーザーは一つ一つのそばかすを除去する能力もありますし、肌全体をきれいにする美顔効果もあります。
また、テープによる保護も必要ありませんので、日常生活への支障を最小限にできますので、当院ではそばかす治療のファーストチョイスの治療です。

光治療(IPL)は、一つ一つの色素斑を除去する力はレーザー治療には及ばないものの、テープなどの術後処置を必要とせず、顔全体の色素斑を改善できます。
また、光治療は細かい色素斑が散在するタイプへの治療効果が高いため、そばかす治療は比較的良い結果が得られることが多いです。

Qスイッチレーザーによる治療効果は高く、ほとんどの場合レーザー照射したそばかすは「消えた」という状態までになります。
しかし、ダウンタイムが上記2つの治療より長くなるため、そばかす治療としてはQスイッチレーザーがファーストチョイスになることはあまり多くありません。

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

ADMは治療に良く反応します。
ただし、Qスイッチレーザーまたはピコレーザーを使用した強めのレーザー治療のみ効果が得られ、IPLなどの光治療、塗り薬、飲み薬などの美肌治療では効果が得られません。

また、治療経過も特徴的で、レーザー照射後1~2ヶ月は全く良くなっていないように見えることがよくあります。
通常2~3ヶ月ほどして少しずつ薄くなりはじめ、約1年かけてゆっくりと薄くなります。

レーザー治療開始から約1年かけて効果がでてきますので、始めは効果が目に見えなくてもあせらずにじっくり待つことが大切です。

ADMの特徴的な治療経過のことを理解していないと、必要以上に治療を繰り返してしまい、無駄に治療の時間と費用をかけるばかりでなく、色素沈着の増悪や色素脱失といった合併症を起こしやすくなりますので注意が必要です。

この記事の監修医師

大船T's形成クリニック
院長:高梨 昌幸

大船T's形成クリニック院長 高梨 昌幸
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