シミ・そばかすを消す方法
症状・治療法・効果的なケア
シミ、そばかすを消す方法とは
顔や手の甲に生じる茶色い色素は、一般的にシミ・そばかすと呼ばれており、効果的に消すには、シミ・そばかすの種類に応じて適切な治療を行うことが大切です。
日常でよく認められる主なシミは6種類あります。
それは、「老人性色素斑」「雀卵斑(そばかす)」「脂漏性角化症(老人性いぼ)」「ADM」「肝斑」「炎症後色素沈着」です。
それぞれに特徴があり、それに応じて数種類のレーザー治療やお薬などによる治療があります。
ここでは、前半部分で先に述べた代表的な6種類のシミの特徴と原因、基本的な治療法に関してお伝えし、後半部分では医療機関で行われるレーザーを中心としたシミ・そばかす治療の特徴をお伝えします。
種類別シミ・そばかすの症状・原因・治療法
まずはそれぞれのシミの特徴と原因、適応となる主な治療法ついてお伝えします。
それぞれのシミの代表的な症状を中心に述べますが、限られたスペースでの情報だけでは、見分けられるようになるのは、なかなか難しいと思います。
実際、日々シミを診察している医師でさえも迷うことがあるくらいなのですから。
しかし、ある程度知識があるのと無いのでは、今後のクリニック選びや治療法の選択に大きな違いがありますので、何となくでも良いので概要をつかんでいただければと思います。
老人性色素斑
一般的にシミと言われているものの多くが「老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)」と呼ばれるシミです。
老人性色素斑の症状
典型的な老人性色素斑は30代~40代以降に顔、手の甲、前腕など日光にあたりやすい場所にできます。
男女問わずできますので、年齢とともに誰でも1個や2個の老人性色素斑はできると言えるでしょう。
稀ですが、20歳前後でも顔など日光にあたる場所には老人性色素斑ができることがあります。
老人性色素斑が単独でできている場合もありますが、脂漏性角化症という盛り上がったシミが混在している場合も良くあります。
また、顔の場合は特にほかの種類のシミ、そばかす、肝斑、ADMなどが混ざっていることが良くありますので、まずは専門医による診断が大切です。
老人性色素斑の原因
老人性色素斑の原因は年齢による皮膚の老化と今まで浴びてきた紫外線の影響が主なものです。
特に紫外線の影響は非常に大きいです。
常に紫外線を浴びている顔や手の甲に老人性色素斑ができやすことからも、老人性色素斑ができる原因として紫外線の影響が大きいことが想像できます。
日中ほとんど車に乗っている職業ドライバーの方には、顔の右半分にシミが多いという現象も紫外線を顔の右半分に多く浴びたことによるものと考えると納得がいきます。(右ハンドル車の場合です)
紫外線によって皮膚では以下のような変化がおきます。
-
1
長年の紫外線暴露による細胞の損傷が蓄積する
↓
-
2
メラニン産生の信号が出る
↓
-
3
メラノサイト(メラニン産生細胞)が活性化し、メラニン色素が過剰に産生される
その他に顕微鏡レベルでは皮膚構造の変化と細胞の異常増殖(表皮突起の延長とメラノサイト、ケラチノサイトの異常増殖)を認めます。
シミは肌の代謝が悪くなって色素がたまっている状態と説明されていることがありますが、老人性色素斑はメラニン色素が集まって茶色くなっているだけではなく、皮膚構造の変化と細胞の増殖を伴っているのです。
すなわち、老人性色素斑は皮膚のできものとして治療法を考える必要があるのです。
雀卵斑・そばかす
そばかすのことを医学用語で「雀卵斑(じゃくらんはん)」と言います。
漢字が表す様に、そばかすが雀の卵の模様に似ていることが名前の由来です。
雀卵斑の症状
典型的なそばかすは子供の頃から両頬、鼻を中心に数ミリほどの細かく茶色い色素斑が散らばるように存在します。
しかし、子供の頃はあまり目立たず、思春期以降や妊娠などをきっかけに目立ってくるものもあります。
広範囲に出現するそばかすは、両頬、鼻以外にも口周囲などを含め顔全体に認められます。
雀卵斑の原因
雀卵斑は色素を均一に保つことができない「色素異常症」の一つですので、遺伝的な原因が大きいです。
その他には、紫外線の影響や妊娠などホルモンバランスの変化で目立ってくることがあります。
脂漏性角化症
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は老人性イボとも呼ばれていますが、老人性色素斑と並んで、男女問わずよくできるシミの一つです。
イボやほくろのような見た目のこともあるのですが、盛り上がったシミであると考えてください。
脂漏性角化症の症状
典型的な脂漏性角化症は30代~40代以降に顔、手の甲など日光にあたりやすい場所にできるのですが、胸やお腹、頭皮などあらゆる場所にできます。
脂漏性角化症を一言で表すならば、「盛り上がったシミ」なので、通常のシミのように茶色いものが多いのですが、黒色のもの、周囲の肌と同じ肌色のものもあり様々なタイプがあります。
また、脂漏性角化症は「かゆみ」を伴うことがあります。
これは脂漏性角化症の深い部分でリンパ球や毛細血管が増え、いわゆる炎症が起きているからです。
脂漏性角化症の原因
脂漏性角化症の主な原因は紫外線と加齢です。
長年浴びてきた紫外線の影響が少しずつ皮膚のダメージとして蓄積し、脂漏性角化症を形成します。
したがって、日光にあたりやすい顔や手の甲に出来やすいのです。
しかし、比較的若い頃から紫外線の影響が少ない腹部などにも多発する場合があり、遺伝的な要因でできる脂漏性角化症も一定の割合で存在すると考えられます。
肝斑
肝斑(かんぱん)とは、成人女性に認められることが多い、シミ(頬のクスミ)の一種です。
肝斑の症状
肝斑の典型的な症状は、30~40歳代以降に両ほほ(頬骨付近)に認められるクスミ、境界が不明瞭な色素斑がほぼ左右均等にみられます。
その他の部位として、額、鼻の下も時々認められます。
圧倒的に女性が多いのですが、男性にも出現します。
そして、60歳代以降で徐々に自然軽快します。(70代以降の方の肝斑は極めて稀です。)
肝斑の原因
肝斑の原因は完全には解明されていませんが、皮膚の物理的な刺激(こするなど)、紫外線、ホルモンの影響が指摘されています。
中でも皮膚の物理的な刺激と紫外線は影響が強いと考えられます。
例えば、積極的な治療を行わないでも、皮膚に刺激を与えない、紫外線を避けるを徹底していくことで自然と肝斑が軽快していくこともあります。
また、長年通院されている方の肌の状態を観察していると、紫外線が多い時期はやや肝斑が目立つようになり、紫外線が少ない時期になると自然とまた目立たなくなる季節変動を認めることも少なくありません。
適応となる主な治療法
- 内服薬(トラネキサム酸)
- 肌ケア指導
- 外用薬
ADM
「20代になって両頬のシミが目立つようになった」
「肝斑と診断され治療したが良くならない」
「光治療を繰り返しても効果が無い」
そんな経験がある方はADM(エーディーエム)の可能性も疑った方が良いでしょう。
ADMの症状
ADMの典型的な症状は、20歳~30歳頃、両頬にややくすんだ茶褐色の斑点状のシミが認められるようになります。
両頬が最も多いのですが、まぶた、額、鼻などにも出現することがあります。
通常のシミ(老人性色素斑)より若いころに出てくることが多く、色や形も見慣れれば特徴があります。
ADMと見分けなければならないシミは「肝斑」と「老人性色素斑」です。
老人性色素斑とADMの治療はほぼ同じ方向性なので、見分けがつかなくてもあまり問題にならないことがありますが、肝斑とADMは治療の方向性が違いますので、見分けることが非常に大切です。
ADMの原因
ADMのはっきりとした原因はまだ不明です。
炎症、紫外線、女性ホルモン、妊娠などの影響ががきっかけになることが示唆されていますが、家族歴を認めることが少なくないため、遺伝的要因があると考えられます。
炎症後色素沈着
炎症後色素沈着とは、ケガ、ヤケド、皮膚疾患など皮膚が一時的にダメージを受けた後に、皮膚が茶色くなることです。
炎症後色素沈着の症状
皮膚がダメージを受けた箇所に、治癒後1~2ヶ月かけて茶色い色がつきます。
色素沈着の程度はダメージの程度や体質によって様々です。一般的にはダメージが大きく、日焼けで黒くなりやすい体質の方ほど症状は強く出る傾向があります。
ただし、色素沈着の原因が治っていれば、数年かけて自然治癒することがほとんどです。
前述の肝斑も炎症後色素沈着の一種とする考えもあります。
炎症後色素沈着の原因
皮膚に炎症を起こすことなら全て原因となり得ます。
例えば、ニキビ、虫刺され、かぶれなども原因となります。
レーザー治療後に茶色くなる場合もそうですし、日焼けもそうです。
炎症の伴う色素沈着は、皮膚の防御反応の一つとも言えます。
適応となる主な治療法
- 内服薬
- 外用薬
シミ・そばかすを消す方法
シミ・そばかすを消したり、改善したりする方法は様々あります。
ここでは、医療機関で行われている主な方法、「レーザー治療」「IPL・フラッシュライト」「内服薬」「外用薬」についてお伝えします。
※シミ治療にはその他にもイオン導入、ケミカルピーリング、ドライアイス等様々ありますが、ここでは割愛させていただきます。
レーザー治療
シミの治療の代表選手はレーザー治療です。
シミ治療に使用されるレーザーはその作用によって2種類に分けられます。
一つ目が「色を消すレーザー」で、二つ目が「皮膚を削るレーザー」です。
色を消すレーザー
皮膚に傷をつけずにシミを治療するレーザーです。
Qスイッチレーザー(ナノセカンドレーザー)とピコセカンドレーザー(ピコレーザー)の2種類があります。
Qスイッチレーザー
昔からあるシミのレーザー治療といえばこのQスイッチレーザー(ナノセカンドレーザー)です。
Qスイッチレーザーは、ルビーレーザー、ヤグレーザー、アレキサンドライトレーザーの3種類が主に使われます。
それぞれにいくらか特性があるものの、適応と方法を間違えなければ確実性の高い治療と言えます。
適応となるシミ
- 老人性色素斑
- 雀卵斑
- ADM
- 一部の脂漏性角化症
ピコセカンドレーザー
ピコレーザーの呼び名で浸透しています。
Qスイッチレーザーよりも新しいレーザーです。
ピコレーザーはQスイッチレーザーよりも皮膚に与える熱のダメージがより少ないことが特徴です。
ピコレーザーは薄くて細かい老人性色素斑や雀卵斑を、ダウンタイムを抑えながら改善することができるレーザーです。
繰り返し行うことで、肌質の改善も期待できます。
一方で、完成された老人性色素斑の除去はQスイッチレーザーにやや劣る感が否めません。
適応となるシミ
- 雀卵斑
- 薄くて細かい老人性色素斑
- 一部の脂漏性角化症
- ADM
皮膚を削るレーザー
先ほどのQスイッチレーザーと違い、物理的に皮膚を削り取るようにシミを除去します。
炭酸ガスレーザー、エルビウムヤグレーザーが主に使われます。
ホクロのレーザー治療でどちらのレーザーも良く使われます。
勉強熱心な患者さんは、炭酸ガスレーザーとエルビウムヤグレーザーの比較をされますが、それぞれのレーザーの特性はあるものの、個人的にはどちらのレーザーが優れているという比較はあまり意味がないと考えています。
紙を切るときにハサミで切るか、カッターで切るかの違いのようなもので、状況によって使い分けられればもちろん良いのですが、どちらか一方の道具でもその特性を良く知ったうえで、使い慣れている道具を使うことのほうが大切だと考えています。
適応となるシミ
- 脂漏性角化症
- 一部の老人性色素斑
レーザートーニングについて
上記のレーザーがシミ治療におけるオーソドックスなものですが、Qスイッチレーザーやピコレーザーを使用したレーザートーニングという治療法があります。
出力を低く設定したレーザーを繰り返し照射する方法で、主に肝斑のレーザー治療として行われています。
正確な診断と適切な射方法で行えば、難治性の肝斑も改善する可能性が十分ある治療です。
一方で、難治性の色素脱失や治療終了後のリバウンドなどの問題も少なからずあります。
また、1~2週間ごとに数回以上照射する必要があるため、明らかにレーザートーニングの適応ではないシミに対してもコース契約を勧めてくる営利目的の医療機関があることも残念ながら事実です。
IPL・フラッシュライト
レーザーとは違い、様々な波長の光を皮膚に照射する治療です。
単純にシミを除去する力はレーザーに劣るのですが、一台の機械でシミ治療、赤ら顔治療、肌質改善、脱毛など複数の治療ができることが特徴です。
まだレーザーによるダウンタイムを抑えた美顔治療がそこまで多くなかった頃には活躍の場が多かったのですが、近年はレーザーによる美顔治療が広がってきましたので、活躍の場が大分少なくなってきました。
適応となるシミ
- 雀卵斑
- 老人性色素斑
- 一部の脂漏性角化症
内服薬
トラネキサム酸やビタミンCが代表的な内服薬です。
特にトラネキサム酸の内服は肝斑の最も基本的な治療法です。
ただし、内服薬は肝斑や炎症後色素沈着に対しては有効性が確認されていますが、老人性色素斑を消したり、予防したりする効果は確認されていません。(たまに老人性色素斑が少し薄くなることはあります。)
適応となるシミ
- 肝斑
- 炎症後色素沈着
外用薬
トレチノインとハイドロキノンがよく使用されます。
トレチノインは皮膚のターンオーバーを促進し、メラニンの排出を積極的に促します。
ハイドロキノンはメラニンの生成を抑制する作用があります。
適応となるシミ
- 肝斑
- 炎症後色素沈着
シミ・そばかすのケアや予防法
実は、全てのシミ・そばかすに共通する効果的なケアや予防方法はありません。
あえて挙げるとすれば、紫外線で症状が増強するので、紫外線予防が共通する方法といえるでしょう。
紫外線対策を年中徹底する
紫外線は長期(10年~)では老人性色素斑や脂漏性角化症の原因となります。
また、雀卵斑や肝斑、炎症後色素沈着の悪化の原因ともなりますので、十分な紫外線対策は大切です。
また、シミだけではなく、小じわなど肌の老化現象にも関わってきますので、あまり即効性はありませんが、10年後の自分への投資だと考えて、ストレスのない範囲で紫外線対策を行っていくことが良いと考えます。
よくある質問
-
レーザー治療中は日焼けしてはダメなのですか?
- 日焼けが絶対ダメというわけではないのですが、日焼けしないに越したことはありません。例えば、レーザー治療前にしっかりと日焼けし、肌がかなり茶色くなっていた場合、効率的にシミが除去できない場合や、白斑を生じるリスクが伴います。
また、レーザー治療後(特に治療後1カ月以内)の日焼けは、術後色素沈着のリスクが上がります。 -
ずっと治療を継続しなければならないのですか?
-
シミの種類によって治療継続の必要性が違います。
老人性色素斑、脂漏性角化症
シミ自体はレーザー等で治療可能ですが、シミの原因である肌の老化現象、今まで受けてきた紫外線の影響、遺伝的な要素は治療できません。
ですので、長期的にはまたシミができる可能性が高いので、シミができたらまた治療するかシミが目立つようになる前に定期的な治療を行うことになります。雀卵斑
レーザー等で治療可能ですが、雀卵斑の原因は体質的なものです。
ですので、長期的にはまた雀卵斑がもどってくる可能性が高いので、目立つようになってきたらまた治療するか目立つ前に定期的な治療を行うことになります。ADM
ADMは再発がないと考えられていますので、一旦除去されれば治療は終了となります。
肝斑
肝斑の原因が除去されていれば再発しないのですが、内服薬等で症状が抑えられているだけの場合、治療を中止すると再発しますので、継続的な治療が必要になります。
炎症後色素沈着
色素沈着の原因となる皮膚の炎症を繰り返さなければ再発しません。色素沈着が落ち着いたら治療終了となります。
-
治療によってかえって悪化することはありますか?
- 老人性色素斑、脂漏性角化症、雀卵斑、ADMは治療経過の一環として一時的に悪化したように見えることがありますが、基本的に悪化したまま元に戻らないということはほぼありません。
悪化したまま戻らない場合は、診断が違う(実はホクロだった等)場合があります。
一方、肝斑と炎症後色素沈着は治療によってかえって慢性的な炎症を与えることになった場合、治療を継続すればするほどかえって悪化することがあります。 -
塗り薬だけでシミを消すことはできませんか?
- 肝斑と炎症後色素沈着は上手く濃度などをコントロールすれば改善することが期待できます。
その他のシミは薄くなることはあっても、消すところまでは難しいことがほとんどです。
いずれのシミも塗り薬が慢性的な炎症を起こしてしまった場合、かえって悪化することもあります。 -
妊娠中ですが、治療はできますか?
- 妊娠中の治療は基本的にはお勧めしていません。
妊娠中は色素沈着を起こしやすい体質になっていますし、使用できるお薬(麻酔や内服薬等)に制限があるからです。
ただし、妊娠の影響が少ないと考えられる小範囲のQスイッチルビーレーザーなどは、場合によって行っています。
院長のメッセージ
シミ・そばかすの治療はまず診察が大切です。
シミ・そばかすの種類に応じて、
適切な診察ができていないと全く結果がでないということもあります。
診断を的確に行い、それぞれのシミ・そばかすに応じた
適切な治療を行うことで初めて良い結果が得られます。
また、シミ・そばかすの悩みは想像以上に大きく、
治療が終了した方の喜びの声を頂くたびにやりがいを感じながら日々の診療にあたっています。