胸オペの術後アフターケアは必要?どんなことが必要なのか説明します
胸オペは手術を受けたら終わりではありません。
術後アフターケアも術後結果を左右する大切なものです。
術後アフターケアの主な目的は、
- ① トラブル回避とトラブルの早期発見のため
- ② トラブルからのリカバリーのため
今回は胸オペの主な術後アフターケアと、その必要性についてお伝えします。
胸オペの術後アフターケアは病院やクリニックでやっているの?
術後アフターケアは当然手術を受けた病院やクリニックで行います。
何しろ、手術を行った医師が術前の状態、手術中の所見など一番様々な情報を持っていますので、担当医がフォローするのが一番スムーズです。
もちろん海外で行ったケースでも同様です。
ただし、海外での行った場合や国内でも術後転居したなどで、手術を行った医療機関へ通院することが難しい場合はお近くの形成外科を受診してください。
もちろん胸オペを行っている形成外科が望ましいですが、よほど特殊なケースでなければ一通り経験を積んだ形成外科医であれば対応できます。
胸オペの術後アフターケアにはどのような種類があるの?
ここからは胸オペの術後アフターケアの具体的な内容と目的についてお伝えします。
術後アフターケアは医療機関により少し違いがありますが、当院の方法をお伝えすることでおおまかな部分をつかんでもらえればと思います。
手術当日の術後アフターケア
手術当日のケアは「安静」と「患部の圧迫」です。
なぜ安静と患部の圧迫が大切か。
それは術後24時間以内に起こり得る合併症で最も気をつけている再出血を予防するためです。
再出血は特に術後6時間以内が最も起こりやすい時間帯で、その後徐々に発生率が下がってきます。
再出血により血腫という血液の溜まりが形成されると、その程度によっては再手術が必要になってしまいますので、手術当日は最も気をつけている合併症です。
再出血と血腫形成を防ぐための術後ケアは、安静と患部の圧迫が何よりも大切です。
ただし、患部の圧迫はクリニックが圧迫用のバンドを使って行っていますので、外さなければそれで大丈夫です。
ですので、患者さんご自身でやっていただくことは安静にしていただくことのみです。
手術翌日の術後アフターケア
手術翌日はクリニックで検診を行います。
翌日検診では
- ・血腫など術後早期のトラブルの有無を確認
- ・ドレーン(血液などを吸引する装置)を抜去
- ・次回検診(7~10日後)までの処置の方法や注意点の説明
よく心配されるのですが、ドレーンを抜くのは痛くありません。
運動はまだできませんが、一般的な日常生活の範囲内の活動、シャワーは可能になります。
日中は胸にバンドを巻き、圧迫を継続。
傷の処置としてはテープを貼って頂きます。
手術翌日以降に起こり得る合併症は、
- ・ゆっくりと形成される血腫
- ・水がたまる漿液腫
- ・感染
血腫と漿液腫は胸の圧迫用バンドと運動を控えることで予防していきます。
感染はよほど傷を不潔に扱わなければ、通常生じません。
血腫や漿液腫が原因となって感染を起こすことがごく稀にある位です。
術後7~10日頃のアフターケア
術後7~10日頃に検診を行います。
(遠方の方で来院が困難な場合は行わないこともあります。)
この時期に確認していることは
- ・漿液腫などの有無を確認
- ・傷の治り方を確認
- ・感染症の有無を確認
経過に問題が無ければ通常の入浴や軽い運動が可能になります。
しかし、胸に強い衝撃が加わると血腫や漿液腫を形成することがありますので、引き続き注意してください。
そして、胸の圧迫用バンドも術後1ヵ月まで続けることがとても大切です。
途中で圧迫用バンドをやめてしまうと、水が溜まりやすくなりますし、まだしっかりと固定されていない胸の皮膚が変形して、変な膨らみなどを残してしまうこともあります。
術後1ヵ月頃のアフターケア
術後1ヶ月頃に検診を行います。
(遠方の方で来院が困難な場合は行わないこともあります。)
この時期に確認していることは
- ・肥厚性瘢痕・ケロイドを生じていないか確認
- ・左右差、余剰皮膚の程度を確認
この時点で特に問題がなければ術後のアフターケアは終了です。
胸の圧迫用バンドも終了となり、激しい運動も徐々に始めることができるようになります。
合併症を生じたときの対処法・治療法について
適切なアフターケアを行っていても、合併症を生じる可能性はわずかながらあります。
合併症を生じた場合は自己ケアだけで対応できる場合は少なく、医療機関での処置・治療が必要になることがほとんどです。
血腫(けっしゅ)ができた場合
血腫(けっしゅ)とは、血液が溜まった状態のことです。
胸オペにおいては、乳腺を切除したスペースに血腫を形成します。
血腫が生じてしまった時の対処法は
- ・自然吸収を待つ
- ・血腫除去術
- ・血腫が溶けた頃に注射で吸引
いずれにしても医療機関での判断が必要です。
傷の治りが悪い場合
乳輪縁の傷の治りが悪いことがたまにあります。
乳腺や脂肪の除去によって切開創の血流が悪くなることが、傷の治りが悪くなる原因です。
この場合、創部を湿潤環境に保ち(創傷保護剤や難航処置)で、自然治癒を待つことが基本です。
また、医療機関によって様々でしょうが、当院での場合、術後の圧迫用バンドを24時間しっかり巻いたままですと創傷治癒遅延を生じやすくなりますので、手術の翌日以降は就寝時にバンドを巻かないようにしています。
胸に水が溜まった場合
術後数日は問題なかったケースでも、それ以降に徐々に水が溜まってくることがあります。
乳腺が大きいケースや、皮下脂肪が多いケースでややリスクがあります。
胸に水が溜まった場合は、運動を控え、胸の圧迫を継続します。
その上で
- ・自然吸収を待つ
- ・注射で吸引する
傷跡が目立ってしまう場合
術後の傷跡が目立つ原因として、肥厚性瘢痕やケロイドがあります。
肥厚性瘢痕やケロイドの症状は、術後1ヶ月以上経ってから傷跡がミミズ腫れのように赤茶色く膨らみ、目立つようになってしまいます。
このようになってしまう原因は体質によるところが大きいのですが、症状がでてしまったら速やかに追加治療を行います。
肥厚性瘢痕とケロイドは初期症状がほとんど一緒ですが、経過や治癒までの期間が大きく違います。
傷跡がミミズ腫れになるケースの多くが肥厚性瘢痕です。
肥厚性瘢痕は治療に比較的良く反応しますので、内服薬、貼り薬、注射などの治療を行うことで、数か月位で落ち着いてきます。
一方、ケロイドは頻度としては少ないのですが、治療抵抗性であり、軽快と再発を繰り返しながら非常に長期の治療が必要になってしまいます。
たるみ、しわが生じた場合
乳腺の大きさ、手術年齢、皮下脂肪の量など様々な要因で術後皮膚の余り、しわなどが残ることがあります。
胸オペの術後経過が安定するまで約1年かかりますので、それ以降に余った皮膚を切除するか考えることになります。
まとめ
アフターケアについては、初診時にも一通りお伝えしますが、なかなか一度で理解するのは難しいと思います。
手術当日、翌日、1週間後などその都度その時期・状態に応じたアフターケアの方法をお伝えしていきますのでご安心ください。
よくある質問
-
胸オペのバストバンドはいつまでつけますか?
- バストバンドは術後1ヶ月つけてください。
手術当日は再出血予防のために夜間もしっかりと巻きますが、翌日以降は日中だけ巻いて就寝時は外します。
就寝時外すのは、24時間つけたままだと乳輪乳頭の血流が悪くなるからです。
また、早期にバストバンドを終了すると、皮膚の固定が不十分となり胸の形が悪くなることがあります。 -
胸オペの術後のお風呂はいつから入れますか?
- お風呂は翌日以降になります。
術後1週間はシャワーだけにしていただき、傷の経過が問題なければ術後1~2週間以降は湯船につかることができるようになります。
ただし、術後経過によってはシャワーだけの期間が延びることもあります。
温泉に関しては湯船が可能になってからとしてください。 -
ドレーンを抜くのは痛いですか?
- ドレーンを抜くのは痛いと考えている方が思いのほか多いのですが、当院は手術翌日にドレーンを抜きますので、抜く時の痛みは通常ありません。
翌日健診で、ドレーンを抜くときに身構えていた患者さんから「え?もう抜けたんですか。全然痛くないんですね。」とよく言われます。 -
筋トレなど運動はいつからできますか?
- 乳腺の大きさ、術式、術後経過にもよりますが、術後1~2週間で筋トレや激しい接触を伴わない運動が可能になります。
胸に激しい衝撃が加わるような運動、コンタクトスポーツなどは術後1ヶ月からが目安です。
ただし、上記はあくまで目安であり、術前の状態、術式、術後経過により多少前後します。 -
術後の痛みはどれくらいですか?
- 痛みの感じ方はどうしても個人差があるのですが、多くの方が「強い筋肉痛のような痛み」と表現されます。
手術当日の夜~翌日までが痛みのピークで、その後徐々に落ち着いてきます。
多くの方が術後2~3日すればデスクワーク程度の活動であればできる位になります。
院長のメッセージ
胸オペにおいて、手術自体がもちろん大切ですが、術後のアフターケアも手術と同様に非常に大切です。 今までの経験、術中所見、術者のクセなどを含めてアフターケアの方法、タイミングをはかり、合併症の早期発見とリカバリーを行います。 したがって当院では術者が術前から術後まで一貫して担当し、フォローしています。