シミの種類と見分け方
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シミの種類
顔にシミができてしまい、鏡を見るたびに気になってしまう...。そんな経験をされている方も多いのではないでしょうか。
シミは年齢や生活習慣、ホルモンバランスなど、様々な要因で発生します。
見た目は似ていても、シミの種類によって原因や適切な治療法が異なるため、効果的な治療を受けるためには、まず自分のシミがどのタイプなのかを知ることが大切です。
この記事では、形成外科専門医の立場から、代表的なシミの種類とその特徴、治療法について説明していきます。
シミの種類を知ることが重要
シミの治療を成功させるためには、まず正確な診断が欠かせません。シミには大きく分けて6つの種類があり、それぞれ原因や性質が異なります。たとえば、レーザー治療が効果的なシミもあれば、レーザーを当てることで逆に症状が悪化してしまうシミもあるのです。
形成外科・美容皮膚科では、まず専門医による詳しい問診と診察を行い、患者さんのシミのタイプを見極めます。その上で、それぞれのシミに最適な治療法を提案していきます。シミの種類を正しく理解することは、ご自身に合った治療法を選択する第一歩となります。
シミの種類と見分け方
シミの種類は主に以下の6種類に分類されます。
・老人性色素斑(日光性黒子)
・そばかす(雀卵斑)
・肝斑(かんぱん)
・ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
・脂漏性角化症(老人性イボ)
・炎症後色素沈着
これらのシミは見た目が似ていることも多く、正確な区別が難しい場合があります。
また、複数の種類のシミが同時に存在することも少なくないため、確実な診断には専門医による詳しい診察が必要です。
それぞれのシミの特徴や治療法については、以降で詳しく解説していきます。
老人性色素斑(日光性黒子)
老人性色素斑は、一般的に「シミ」と呼ばれる代表的な症状です。
主に40代以降の方に多く見られ、頬やこめかみ、手の甲など、日光に当たりやすい部分に発生します。加齢に伴う肌の変化と長年の紫外線の影響により、徐々に数が増え、大きさも拡大していく傾向があります。
シミ取りレーザー治療で最も多く治療されており、適切な治療を行えば改善が期待できます。ただし、治療後も日常的な紫外線対策を怠ると新たなシミの発生や再発の可能性が高くなるため、治療と並行して適切なスキンケアやメンテナンスも重要です。
年齢とともに増えていく傾向があるため、早めの治療と予防が効果的です。

見分け方
老人性色素斑は以下のような特徴があります。
形は円形や楕円形に近いことが多く、薄い茶色~茶褐色の色素斑として認められます。
大きさは小さいもので数ミリ大、大きいものでは数センチまで様々です。
表面は平らで凸凹は無いかあっても僅かです。
また、日光に当たる部分によく出現しますが、腹部など日光に当たりにくい場所にもできます。
一般的にはこのような特徴がありますが、老人性色素斑以外にも、脂漏性角化症・そばかす・肝斑・ADMなどのシミや、高齢者の場合は稀に皮膚がんが混在していることもありますので、まずは専門医による診断が大切です。
原因と治療法
原因
老人性色素斑の主な原因は、長年の紫外線暴露と加齢による肌の変化です。
長年の紫外線暴露によって細胞の損傷が蓄積し、メラノサイトと呼ばれるメラニン産生細胞が活性化され、過剰なメラニン色素が産生されます。
また、皮膚構造の変化と細胞の異常増殖(表皮突起の延長とメラノサイト、ケラチノサイトの異常増殖)を認めます。
治療
治療には主にレーザー治療が選択されます。
Qスイッチレーザーやピコレーザーなどの効果が実証された医療機器を使用することで、周囲の正常な肌へのダメージを最小限に抑えながら、老人性色素斑を除去または改善することが可能です。
1回の治療で消えるものもありますが、複数回の治療が必要となることもあります。
また、治療効果を長く維持するためには、日焼け止めの使用はもちろん、帽子やサングラスなどを併用した紫外線対策と、医療機関での定期的なメンテナンスがお勧めされます。
そばかす(雀卵斑)
そばかすは、子供の頃から見られ、思春期に目立ってくる、遺伝性の強い色素斑です。
色白の女性に、数ミリ大の細かい茶色い色素斑が下まぶた・頬・鼻にかけて対称性に散在するのが典型的です。
治療によく反応しますので、そばかすの治療はそこまで難渋することはありません。
しかし、長期的には少しずつ再発するとされています。
再発すると言うと少しガッカリされるかもしれませんが、加齢によるシミも年齢を重ねるごとに少しずつ新しいものができる、再発するなどがありますので、そばかす治療だけが再発と付き合っていかなくてはならなないというわけではありません。
また、経験上しっかりとレーザーで治療されたそばかすは、数年たってもそこまで再発するものでは無いという印象があります。

見分け方
典型的なそばかすは子供の頃から両下まぶた、両頬、鼻根を中心に数ミリほどの細かく茶色い色素斑が散らばるように存在します。
さらに広範囲に広がる場合は、上まぶた、額、口の周りなど顔全体や腕、体幹などにも認められます。
顔全体に広がっている場合でも、もみあげ近くなど生え際近くにはあまり色素斑は認めないことが多いです。
小~中学生頃から目立つようになることが多いのですが、子供の頃はあまり目立たず、思春期以降や妊娠などをきっかけに目立ってくるものもあります。
思春期ごろが一番目立つようになり、中高年以降は次第に薄くなることが多いのも特徴の一つです。
そばかすと似た色素斑に、薄くて細かいタイプの老人性色素斑があります。
発症年齢や色素斑の広がり方から見分けることが大体可能なのですが、治療方針に大差はないので、見分けることにそこまでこだわる必要はありません。
原因と治療法
原因
子供の頃から認められる典型的なそばかす(雀卵斑)は色素を均一に保つことができない先天性の色素異常症の一つで、遺伝によるものです。
そばかすは女性に多く、思春期ごろから目立ち始め中高年ではやや目立たなくなってくることや、妊娠で目立つようになることから、ホルモンとの関係も強いと考えられています。
その他に影響を与えるものは何といっても紫外線です。
日焼けがきっかけとなって、そばかすが目立ってくることは非常によくあります。
治療
そばかすは治療によく反応しますので、適切な治療によって改善することができます。
医療機関で行われている「ピコレーザー」「光治療」「Qスイッチレーザー」による治療は、いずれも高い確率で改善します。
特にピコレーザーは雀卵斑との相性は良く、条件が合えばお勧めできる治療です。
肝斑(かんぱん)
肝斑(かんぱん)は、頬にクスミとして認められることが多いですが、額、口周りなどにも見られることがあります。
原因は「刺激による皮膚の炎症」「女性ホルモン」「紫外線」などいくつかの原因が関係しています。
治療は飲み薬が第一選択ですが、スキンケアの方法の改善も必須です。
肝斑を一気に消すことは難しく、少しずつ改善を目指します。

見分け方
肝斑(かんぱん)の症状には以下のような特徴があります。
対称性 : 肝斑は顔の左右に対称的に現れることが一般的です。
色調 : 肝斑は輪郭が不明瞭で、薄茶~茶色い色素沈着として認められます。肌のクスミと表現されることもあります。
発症部位 : 肝斑は頬骨付近に認められることが最も多いです。その他、額や鼻の下に認められることもあります。
一方、まぶたや生え際には認められることが無いことも大きな特徴です。
発症年齢 : 肝斑は主に30〜40歳代の女性に発症することが多く、高齢になると消失する傾向があります。
原因と治療法
原因
肝斑の主な原因は、「外部からの刺激」もしくは「ホルモンの影響」の2つがあります。
外部からの刺激は、紫外線、摩擦など物理的な刺激、外用薬やレーザー治療などがあります。
ホルモンの影響に関しては、妊娠や経口避妊薬の使用などによって、女性ホルモンのバランス変化が肝斑の発症や症状悪化に関連していると考えられています。
また、高齢者には肝斑がほぼ認められないことからも、女性ホルモンの肝斑への影響が示唆されます。
しかし、少ないながら男性にも肝斑を認めることがありますので、必ずしも女性ホルモンの影響だけではないと考えられるところが肝斑の難しい部分です。
治療
肝斑の治療は医学的なアプローチと適切なスキンケアの両方からアプローチすることが、とても大切です。
特に、肝斑を意識したスキンケアをおろそかにした状態では、医学的なアプローチの効果が全く得られなくなります。
肝斑のためのスキンケア
肝斑のためのスキンケアは、肝斑の原因をできるだけ取り除くという目的で行います。
肝斑の原因、すなわち「肌の刺激」をできるだけ与えないというです。
具体的には、紫外線対策を十分に行い、肌を愛護的に扱って下さい。
洗顔の時は泡だけで洗うようにし、タオルなどでゴシゴシ擦ってはダメです。
医学的なアプローチ
肝斑治療の第一選択はトラネキサム酸の内服です。
トラネキサム酸の内服を行ったうえで、必要であればレーザー治療などを行うことがありますが、上記のスキンケアを徹底し、内服を継続するだけでもかなりの率で肝斑は改善します。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
ADMは後天性真皮メラノサイトーシス、遅発性両側性太田母斑などとも呼ばれ、もともとはアザの一種として扱われていたこともありましたが、現在はシミの一種として扱われています。
ADMは頬骨付近によくみられるシミの一種で、ADM単独の場合もありますが、老人性色素斑や肝斑など他のシミと混在していることも多く、割とよく目にするシミの仲間です。
レーザー治療のみ改善が認められ、比較的深い場所に色素があるため、結果が得られるまで少し時間を要することが多いです。

見分け方
典型的な症状は、20歳~30歳前後に両頬に茶褐色の斑点状のシミとしてでてくることが多く、一般的なシミ(老人性色素斑)より発症年齢が早めなことが特徴です。
両頬に認められることが最も多いのですが、まぶた、額、鼻などにも出現することがあります。
老人性色素斑や雀卵斑等のシミとは違う特徴的な色調や形状のことが多く、見慣れれば比較的診断は容易なことが多いです。
しかし、肝斑と似たような場所にできることから肝斑と間違われたり、老人性色素斑と間違われてしまうことも少なくありません。
肝斑とは治療法が全く違いますし、老人性色素斑とも治療法・治療経過が違う部分がありますので、しっかり診断がついていないとなかなかシミ(ADM)が消えない・・・ということになってしまいます。
ただし、ADM、肝斑、老人性色素斑などが混在している場合も少なくありませんので、その場合はどう治療計画をたてるかという点も大事になってきます。
何はともあれ、まずは専門の医療機関での診断が大切です。
原因と治療法
原因
ADMは真皮という皮膚の深い部分にメラノサイトとうメラニン産生細胞が入り込んでしまっていることが原因です。
通常、真皮ではメラノサイトは認められないのですが、ADMでは真皮に何かしらの原因でメラノサイトが認められるようになります。
なぜメラノサイトが真皮の中に入り込んでしまうのかという点に関しては、はっきりとした原因はまだ解明されていません。
しかし、血縁者の間でADMの存在を認めることがあるため、遺伝的な要素はいくらか関連があると考えられています。
治療
ADMは治療に良く反応します。
ただし、Qスイッチレーザーまたはピコレーザーを使用した強めのレーザー治療のみ効果が得られ、IPLなどの光治療、塗り薬、飲み薬などの美肌治療では効果が得られません。
また、治療経過も特徴的で、レーザー照射後1~2ヶ月は全く良くなっていないように見えることがよくあります。
通常2~3ヶ月ほどして少しずつ薄くなりはじめ、約1年かけてゆっくりと薄くなります。
レーザー治療開始から約1年かけて効果がでてきますので、始めは効果が目に見えなくてもあせらずにじっくり待つことが大切です。
ADMの特徴的な治療経過のことを理解していないと、必要以上に治療を繰り返してしまい、無駄に治療の時間と費用をかけるばかりでなく、色素沈着の増悪や色素脱失といった合併症を起こしやすくなりますので注意が必要です。
脂漏性角化症(老人性イボ)
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は「老人性イボ」としても知られ、長期間の紫外線への暴露や皮膚の老化現象が主な原因となって生じる、やや隆起した茶色から黒色のシミの一種です。
一般的には、40代以降の方の顔や手の甲に認められることが多いのですが、20代など若い方にも認められることがあります。
老人性色素斑(茶色い平らなシミ)と見た目がやや異なり、少し盛り上がっていることが特徴です。
時々炎症を伴うことがあり、この場合、赤みや痒みを生じることがあります。
脂漏性角化症の発生は、何もなかったところから突然小さな脂漏性角化症ができて徐々に大きくなる場合もありますし、長年の老人性色素斑から脂漏性角化症が発生する場合もあります。

見分け方
脂漏性角化症の見た目
はじめはあまり目立たないものでも、長い年月をかけて少しずつ色が濃くなったり大きくなったりする傾向にあります。
大きさは数ミリ位のものが最も多いですが、中には数センチ位になるものもあります。
脂漏性角化症の外見はとても色々なタイプがあります。
色は通常のシミのように茶色いものやホクロのように黒色のもの、周囲の肌と同じ肌色のものもあります。
また、形もわずかに隆起しているくらいのものからイボのように強く突出しているものまであります。
脂漏性角化症の自覚症状
自覚症状は無いことが多いのですが、たまに「赤み」や「かゆみ」を伴うことがあります。
これは脂漏性角化症の深い部分でリンパ球や毛細血管が増え、いわゆる炎症が起きているためです。
原因と治療法
原因
脂漏性角化症の最も大きな原因は、今まで蓄積されてきた紫外線のダメージです。
紫外線の影響はリセットすることが難しく、遺伝子レベルで少しずつダメージが蓄積し、脂漏性角化症などのシミ、しわなど光老化と呼ばれる老化現象の原因となります。
ですから、脂漏性角化症は日光にあたりやすい顔や手の甲にできやすいのです。
また、日焼け以外にもヤケドやケガなど物理的な皮膚障害が原因となることもあります。
一方で、紫外線の影響が少ないはずの腹部に脂漏性角化症が多発しているケースや、比較的若い年齢にもかかわらず脂漏性角化症が多発するケースもありますので、遺伝的な原因でできる脂漏性角化症も一定の割合で存在すると考えられます。
治療
脂漏性角化症の治療法は、レーザー治療、液体窒素治療、切除手術など様々あります。
1.脂漏性角化症のレーザー治療
最も確実でお勧めできる方法は組織を削り取るレーザー、炭酸ガスレーザーとエルビウムヤグレーザーによる治療です。
一般的には炭酸ガスレーザーが使われることが多いのですが、組織の熱ダメージが少ないということでエルビウムヤグレーザーを好む術者も一部います。
ただし、脂漏性角化症のレーザー治療はそこまで難しいものではありませんので、使い慣れているレーザーであればどちらも治療結果に大差はありません。
クリニック・病院選びの際に、使用するレーザーの種類をそこまで気にする必要はないでしょう。
シミ治療のレーザーにはQスイッチレーザーやピコレーザーもありますが、わずかに隆起している脂漏性角化症には有効ですが、隆起の程度によっては限界があります。
2.脂漏性角化症の液体窒素治療
液体窒素治療はほとんどの皮膚科で簡単に行うことができ、保険適応になることもあるというメリットがあります。
一方、脂漏性角化症の厚みに合わせて治療強度の調整を行う必要があり、これが非常に難しいです。
やりすぎれば強い色素沈着が長期にわたり残りますし、弱すぎれば取り残しや早期の再発につながります。
3.脂漏性角化症の切除手術
確実に取りきるという点では良い治療なのですが、傷跡が残るという点がデメリットです。
組織を検査に出したい場合や、炭酸ガスレーザーやエルビウムヤグレーザーでは傷が治るまでかえって時間がかかると予想される場合に限ってお勧めできる治療です。
色素沈着(くすみ)
色素沈着は、メラニンと呼ばれる色素が正常な皮膚より多く認められる状態です。
例えば、日焼けも色素沈着の一つですし、その他、ニキビなどの炎症が起きたあとに茶色い色素が残る炎症後色素沈着、ナイロンタオルや衣服などで長期間にわたる刺激を与え続けたことによる摩擦黒皮症(まさつこくひしょう)など、様々な原因で色素沈着が生じます。
見分け方
色素沈着(くすみ)は、小さい斑点状のものから、ぼんやりとした広範囲のものまで多岐にわたります。
見た目だけで明らかなものもありますが、その箇所に炎症を起こしたことがないか、摩擦が生じていないか、色素沈着しやすい肌質ではないか等の問診と視診がとても大切になります。
原因と治療法
虫刺され、ニキビ、外傷、やけど、摩擦、紫外線、肌治療(ピーリング、レーザー、光治療など)等、様々な炎症が引き金となります。
炎症が起きると、メラノサイトが活性化され、メラニン色素の産生が促進されることで色素沈着が形成されます。
治療法は、まずは原因の除去です。
色素沈着を起こした原因を放置したまま治ることはまずありません。
原因が除去された上で、治療の大原則は「肌に刺激をしないようにして、じっと待つ)です。
待つ時間は様々ですが、半年~数年の時間が必要になります。その上でトラネキサム酸など炎症を抑える内服薬を補助的に使用することもあります。
この記事の監修医師
大船T's形成クリニック
院長:高梨 昌幸
